反骨のルポライター・竹中労が、東京の家を引き上げて移り住んだ「にゃんにゃん共和国」。
「ヤマの父」竹中と数名の名誉市民、そして常に50匹を超える住民のネコたちが暮らした自然豊かな箱根の山屋のことである。
共和国住民であるネコたちの一風変わった命名や性格などの紹介に加え、「にゃんにゃん共和国」設立のきっかけや、急におとずれた終焉も竹中の軽妙な文章でつづられている。
どんな見た目や性格でも、障害や病気の後遺症のある子にも一匹一匹分け隔てなく慈しむ様子からは、竹中の人一番のネコ愛をうかがうことができる。
現代とは異なる昭和のネコとの生活ではあるが、現代とは変わらぬネコとの向き合い方や愛情を垣間見ることができる一作である。
本書は雑誌『猫の手帖』の1978年10月号・12月号、1979年2月号・6月号・8月号に連載された文章を基に、初めて書籍化しました。
竹中労(たけなか・ろう)
1930年生まれ。東京外語大学除籍。フリーのルポライターとして活躍。政治から芸能まで広い分野をテーマに、権威とは無縁な時代の心性を掘り起こす文章は、竹中節として多くの読者を魅了した。91年5月19日肝臓癌で死去。父親は画家の竹中英太郎。主な著書に『黒旗水滸伝』『山谷・都市反乱の原点』『琉球共和国』『世界赤軍』『ビートルズ・レポート』『にっぽん情哥行』などがある。